こんにちは。


だいぶ更新があいてしまいました。
もう本当に忙しくて。。。

申し訳ありませんでした。


実は先月末に日本に帰国しました。 

おかげさまで、無事帰ってくることができました。


実は前回投稿した時に、学会を含めて北欧をいくつか回ってきたというお話をしましたが、その直後わずか三日で身支度をして日本に帰るという超ハードスケジュールでした笑

日本に帰国後も二つの授業の課題に追われ、アップアップの毎日。。。

時差ぼけと課題のために、ほとんど自宅から出る余裕もなく、こもって作業していました。


で、ようやくやるべきことが一段落したのでこちらを更新させていただこうかと。


日本には帰ってきてはいますが、また8月下旬に修論作成のためにロンドンに短期間戻る予定です。
いやー、こうやって考えるとあっという間に時間が経ってしまったなという印象です。


振り返りについては、また今度ゆっくり書きたいと思います。



さて、今日はちょろっと私の修論のアイデアについてお話ししようかなと思っています。

随分前から私の関心がリスニング学習にあるという話はだいぶしてきたと思います。


ただ、リスニング学習というのは他の研究分野(スピーキングや文法の習得)に比べて、あまり盛んではありません。

考えられる理由としては
・多くの研究が英語圏で英語を学ぶ学習者を対象にしており、そういった学習者はリスニングに大きな問題を感じていない場合が多い。
・リスニングの習得は表面的な成果として現れにくいので、そもそもリスニング力の測定が難しい。
・リスニングは大きく脳内のプロセスと深く関係しており、方法論的に難しい。


といったことが挙げられると思います。


でも、皆さんも御察しの通り、日本人の英語学習において大きな問題になるのがリスニングです。

日本では注目されているのに世界的に見るとそれほど注目されていない、このギャップがどうもリスニングについて詳しい情報が出回らない、かつ、根拠の怪しい情報がまかり通るという事態になっているようなのです。


だからこそ、私としてはリスニング上達に必要な要素や学習法は何なのかについて、科学的に効果がある方法を探究したいなと思っていたわけですね。


それで、最初に目をつけたのがシャドーイングです。
今日本でも人気があって、馴染みがある方も多いのではないでしょうか。

確かにこのシャドーイング、自分でやっても効果があったし、効果があるようなことも言われているので興味があったのですが、私はある頃を境にシャドーイングはほとんど効果がなくなってしまったのです。


で、実際に幾つか研究を見てみても、シャドーイングよりもリピーティング(聞いている文を止めて反復する方法)だったり、シャドーイングは初級者にしか効果なかったというような事例が出てきて、シャドーイングの効果に関して懐疑的になってきたのです。


では、どうすればリスニングは伸びるのか?

こうしてリスニング探究で路頭に迷ってしまったのです。



その一方で、いろいろ文献を読んでいると脳科学の分野ではあくまで母語話者が対象ですが、少しずつリスニングというプロセス自体が明らかになってきています。
また、英語教育の分野でもリスニングのストラテジーという分野として研究はされているということはわかってきました。

そこで最近考えているのが、脳科学の分野でわかっている情報をもとにしたリスニングのモデル開発(こちらで少し書いています)や、リスニングストラテジーを応用した学習法の開発です。


まあ、脳科学が興味深いとはいえ、私レベルの知識ではそもそも脳科学的な研究ができない(MRIも使えないうえ、脳の解剖学的知識にも乏しいので)ので、リスニングストラテジーを深く見る研究をやろうかと考えていたわけです。


そして、次の目標としてリスニングストラテジーという分野を見始めたのですが、この分野も起源は意外と古く1980年代にはすでにこの手の研究は始まっています。
ある程度のこと(こちらで書いています)はわかってきているのですが、リスニングストラテジーの問題はそもそもストラテジーをどう定義したらいいのかわからないことと、効果的なストラテジーが人や集団によって異なるので一般化した「こうすれば、できるようになる」みたいな提言ができないということです。


なので、「こういうことをやっている人はリスニングが得意な人が多い」とか「こういう方法でやったらリスニング力が伸びた」みたいな研究はあるのですが、それを他の人に応用した場合に効果が出るのかわからないというのが問題になっているのです。
なぜなら、根本的に「どうして効果が出たのか」がわかっていないからです。


もう一つ、これは個人的な思いつきですが、「最適なリスニングストラテジーは習熟度によって変わるのではないか」ということです。


つまり

初学者にはAという方法が効果的だが

上級者にはBの方が効果的だ

みたいな感じで、効果的なストラテジーが変わる、
逆に言うと「これをやればリスニングはOK」みたいな方法論が存在しないということにもなります。

 
この習熟度がまたどうして問題になるかというと
習熟度によって最適なストラテジーが変わる場合

例えば、「リスニングができない人はこういうストラテジーを使っていて、リスニングができる人はこういうのを使ってる」という研究があった場合、「リスニングができる人のストラテジーを使えばいい」ということにならないところなのです。

というのも
ストラテジーと習熟度の間の相関はあるとしても
因果関係を証明していることにならないからです。


つまり
あるストラテジーを使っているから、リスニングができるというわけではなく
リスニングができるようになってきたから、そのストラテジーを使うようになったという可能性もあるということです。


そう考えてみると、こういったストラテジーは特にCognitive strategyと呼ばれますが、これらのストラテジーの研究を極めたところで、あまり実りある結果が得られない可能性が高いということなのです。


そこで、私が最近注目しているのがリスニング習熟度と学習者が抱えるリスニングの難しさの関係です。

リスニングの難しさとは、例えば、聞き取れてもすぐ忘れてしまうとか、速すぎてそもそも聞き取れないとか、あまり音に集中できないとか、そういったものです。

つまり、リスニングストラテジーでは「学習者が何を意識的にやっているか、できているか」にフォーカスしていましたが、難しさを見ることで「あるレベルの学習者はどんなことができないか」がわかってくるのです。


なので、学習者のできることでなく、「できないこと」にフォーカスを当てることで、リスニングで習熟度が上がるというのはどういうことなのかが説明できるようになってくるのです。


そうするとリスニング習得モデルを構築するきっかけになってくる上に

リスニング習得の順序がわかってくると、どのレベルの学習者にどんな方法のトレーニングが必要なのかわかってくるとも言えるのです。



ということで、ここまで見てみて私の最近のリスニングに関する見解は

・絶対的なリスニング習得法は存在しない
・習熟度によって必要なトレーニングが違う可能性がある。


ということで、習熟度の違いが、リスニングに関して抱える問題にどう影響しているのかの関係性について探究できればなと思っています。

本日も最後までお読みくださりありがとうございました。