こんにちは。


いよいよ春らしくなってきましたね。 
こちらももうサマータイムがはじまり、日が暮れるのがまるで真夏のような時間帯です。


さて、今日は私が最近興味があり、またこれからの研究のテーマにもなるリスニングストラテジーのお話です。


英語のlearning strategiesというのを聞いたことがあるでしょうか。

簡単に言えば「どういったテクニックを使えば効率的に言語を習得できるのか」というのを研究する分野です。



でもこれってよくよく考えてみると第二言語習得研究のすべてのようにも見えてしまいます。
だって、第二言語習得研究とは言語をどうやったら習得できるのかを研究する分野だからです。

つまりlearning strategiesの研究は一見魅力的に見えますが、あまりに広大な分野で、その定義自体に様々な問題もありますし、他の分野といろいろ共有してる部分が多いので、研究するのが難しい分野でもあります。
最近はID(individual difference)になるのかならないのかという議論も巻き起こっていますが、とりあえずこれをとりあげるときりがないので割愛します。


また、一つのテクニックが絶対に効果的というものでもなく、学習者一人一人によってあうテクニックが違うのではないかといわれています。



さて、前置きはこれくらいにして

このあまりに膨大なストラテジーという研究分野ですが、私は特にリスニング能力発達ということに絞って考えたいと思っています。さっきもいったように、すべての言語スキルを仮定してしまうと、収集がつかなくなってしまうからです。


このリスニングストラテジーの研究は最近のことかといえばそうではなく、もう30年近く前からやられている研究です。
なのである程度答えが出ていることも多いです。

そのうちの幾つかをご紹介していければなあと思っています。


まず、今日はすでにお話ししたトップダウン(top-down)とボトムアップ(bottom-up) (こちら参照)についてお話しします。

リスニングには音というインプットを起点に理解するボトムアップ的理解と、背景知識や文脈など大きな流れを利用して理解するトップダウン的理解があります。

実はリスニングストラテジーの研究では
「トップダウンをうまく使っている学習者ほどリスニングが得意」

という結果が出てしまっています(笑)


トップダウンこそ正義というわけです。


いやもちろんこの結果について批判的に再検討していかなければならないのですが、これはある程度当たり前かなという気もするのです。

リスニングにしろ、リーディングにしろ、理解するときは「ボトムアップ」が最初の基盤です。
リスニングでまず音を聞く(理解するではなく)ということなくして理解は成立しません。
どんなに背景知識を持っていようと、インプットそのものがなければ無意味です。

その意味でボトムアップの理解があってはじめて、トップダウンが活きてきます。


逆に言うと、意識しようがしまいが、誰でも理解するときにボトムアップの処理というのはしているのです。
つまり、トップダウンはそこで入ってきた情報を既知の概念と結びつけていこうという、どちらかというとメタな能力です。

トップダウンを使える人というのは、もちろんボトムアップもしてるのだが、ただ聞くだけでなく、理解のためにより意識的に他の作業をしている人だと言えます。 

まとめるとこういうことです。

ボトムアップの人...ボトムアップに極度の集中

トップダウンの人...ボトムアップもしつつ(不可欠なので)、トップダウン処理に集中


ということだと思います。

トップダウンの人の方が余計にいろいろなことをしているわけです。

それだけ情報を処理できるチャンネルが広いわけですから、出来がいいのも納得なわけです。


ただし一口に「トップダウン」といっても、以前書いたように様々なレベルのトップダウンがあると思います。

語彙レベルのトップダウン、センテンスレベルのトップダウン、文脈のトップダウン、背景知識のトップダウン。。。

挙げればきりがないですが、これらを偏にトップダウンと言ってしまうのもちょっと問題かなという気もします。
なので、このあたりをある程度細分化して考える必要があるかなと思います。


最近ちょくちょく話しているかもしれませんが、私はチャンクとしてまとめる能力が重要ではないかなと思っています。

どこまでが一まとまりの文で、どこまでが意味の塊かを意識してリスニングするということです。
これってちょうどトップダウンとボトムアップの中間だなあと思うんですよね。

インプットをある程度のところでまとめるということはそれなりにボトムアップ的にインプットに集中していますし、まとめるということは意味の切れ目を意識しないといけないのでトップダウン的な解釈も重要になってきます。
また、意味の切れ目でまとめられて一度チャンクを作った後に、そのチャンクをどう処理するのかというのはとてもトップダウン的な作業になってくると思います。

そのチャンクの内容は今までの話の流れに対してどういう関係なのか、どういう役割なのか
また、チャンクが捉えられると、そのチャンクの中にうまく聞き取れなかった部分があっても、当該チャンクの意味や機能からその不明部分を補完することもできます。


ということで私はチャンクの有用性についてとても期待しています。



さて、ということで今日は簡単にストラテジーとはなんなのかという話をしました。
また、トップダウンが重要という話も。
具体的にトップダウンを使うとはどういうことなのかはこれからまた記事を書いていきたいと思います。

本日も最後までお読みくださりありがとうございました。